債務整理

自己破産しても年金は差し押さえられないって本当?

自己破産しても年金は差し押さえられないって本当?

年金受給者が自己破産した場合、年金が差し押さえられたり、年金の受給が止められたりすることはないのでしょうか?

また、自己破産しても、将来、年金を受給する権利に影響はないのでしょうか?

ここでは、自己破産と年金の関係について詳しく解説します。

1.自己破産と公的年金

自己破産は債務整理の一種で、申立が認められると借金は全額免除されます。以後は督促もなければ、残りの負債の支払義務もなくなるので、生活の再建を図ることができるでしょう。

ただし、その代わりに20万円以上の財産は没収され債権者に平等に配当されます。

没収対象となる財産は預貯金も含まれるので、年金を受給している方は「年金も差し押さえの対象になるのでは?」と不安になる方も多いと思います。

実際に自己破産をすると、年金はどのように扱われるのでしょうか?

2.年金受給者が自己破産をした場合

(1) 年金は差し押さえ対象にはならない

結論から言えば自己破産をしても年金は差し押さえ対象にはなりません

その理由は以下の通りです。

①受給権の保護

年金はお年寄りの生活を保護するための制度です。

日本国憲法25条1項では、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と生存権を保証しており、お年寄りの命綱とも言うべき年金は受給権が保護されているのです。

国民年金法24条、厚生年金法41条1項では「国民年金の給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない」と規定されており、国税滞納処分を除いて年金を差し押さえすることは禁じられています。

②年金の受給権は破産財団には属さない

自己破産をすると、破産管財人によって財産が没収、換価処分されます。その対象となる財産を「破産財団」と言います。

財団と言うと何かの組織、団体のようですが、破産財団は財産の集合体のことで、資産価値20万円以上の財産、預貯金、債権などが含まれます。債権の中には将来受け取る予定の退職金も含まれます。

破産法では、「破産前に生じた原因に基づく将来の請求権は破産財団に属する」と規定されており、退職金は自己破産に至るまでの労働で生じた債権とみなされ、将来的に受け取るお金でも破産財団に属します。

しかし、年金は破産財団には属しません。その理由は以下の通りです。

理由1…年金は将来の請求権に当たらない

退職金の場合は在籍中の積立金に基づいて支払われますが、年金については保険料を支払っていても、それは今年金を受給している方に分配されているのであり、自分の年金の積立をしている訳ではありません。

実際に将来いくら貰えるのかも分からないので、年金については厳密に言うと「将来の請求権」には当たらないのです。

理由2…年金は新得財産である

破産財団に属する財産は、自己破産手続開始時に破産者が所有していることが前提であり、破産手続開始決定後に得た財産は「新得財産」とみなされ、破産財団には組み込むことができません。

差し押さえも禁じられており、破産者がどのように使っても良いことになっています。

年金は退職金のように一時的にまとまったお金を支払うものではなく、毎月コンスタントに支払われるものなので、自己破産の申立をしても手続が開始されれば新得財産として扱われます。その点でも処分対象とすることができないのです。

(2) 年金が担保にされている場合

※独立行政法人福祉医療機構の年金担保融資は免責されない

自己破産の際、担保権のついている財産は破産財団には組み込まれませんが、基本的に年金を担保にした融資は法律で禁止されているので、そうしたケースを想定する必要はありません。

しかし、独立行政法人福祉医療機構の「年金担保融資」だけは、年金を担保に融資をすることが国から認められており、自己破産しても免責されないので注意が必要です。

・独立行政法人福祉医療機構(WAV)の「年金担保融資」とは?

独立行政法人福祉医療機構の年金担保融資は、年金を担保に高齢者に対して貸付を行う制度で、医療費や住宅の修繕費など、一時的に高額な出費が必要になったときに貸付を行う制度です。

年金を担保にした融資は法律で禁じられていますが、収入や財産のないお年寄りが、まとまったお金を借りられるところが1つもなくなると、闇金から借入をしてしまう可能性があります。

そうならないために、お年寄りでも緊急事態には借り入れができるよう、WAVによる年金担保融資の制度が設けられています。

年金担保融資は年金受有者であれば誰でも融資を受けることができ、年金から天引きされる形で返済を行います。

これは一見ありがたい制度に見えますが、年金担保融資は自己破産をしても免責されないので要注意です。

この貸付制度の担保である年金は毎月振り込まれるので、年金受給中は返済原資がなくなることがないことから、自己破産に関わりなく天引き(返済)は行われます。

完済してない場合、天引きは年金の受給権が消滅するまで行うことが可能です。

普通の融資であれば自己破産すれば免責されますが、年金担保融資は生きている限り強制的に返済させられる仕組みなので、実は非常にリスクの高い借金なのです。

年金担保融資は全体の約1割は借金返済のために借入していると言われていますが、こうした事実を知らずに借入してしまうと、借金で一生苦しむことになってしまいます。

実際に年金担保融資によって経済的破綻をする高齢者は後を絶たず、社会問題に発展しています。

(3) 個人年金の扱い

国民年金、厚生年金など公的年金は差し押さえが禁止されていますが、個人年金などは差し押さえ対象となります。

個人年金受給前に自己破産した場合、解約返戻金が20万円以上あれば差し押さえ対象となります。

個人年金受給中に自己破産した場合は、年金は財産として破産財団に組み込まれますが、受給額の3/4は差し押さえが禁止されているので、全額もっていかれることはありません。

3.将来の年金受給権はどうなるか

※自己破産をしても将来年金は受給できる

(1) 自己破産後の年金受給権について

自己破産をしても、将来の年金受給権がなくなることはありません。

年金をもらうのが何年先であっても、問題なく受け取ることができるので心配無用です。

(2) 自己破産で滞納分は免責される?

年金保険料を滞納している場合、自己破産をしても滞納している保険料が免責されません。

公租公課に関わる支払いは非免責債権であり、自己破産に関わらず指定の期日に支払う義務があります。

滞納を放置していると最終的には強制徴収および差し押さえに発展するので、どうしても支払えない場合は、年金窓口で相談をしてみましょう。

自己破産をするほどの経済状態であれば、免除、猶予の制度を利用できる可能性があります。

4.年金の口座凍結には要注意

公的年金は自己破産をしても差し押さえられることはありませんが、年金を口座振込にしている場合は要注意です。

自己破産で弁護士から受任通知が送られると、銀行から借り入れがある場合はその銀行の口座凍結され、預金とローンの残債が相殺されます。

受任通知後に振り込まれたお金を相殺することは法律で禁じられているので、相殺されるのはあくまでも受任通知が届いた時点の預金のみです。

しかし、受任通知が届いたあとも口座凍結が解除されるまでには時間がかかるので、相殺以外にも新たに振り込まれた年金が引き出せなくなるという問題も生じます。

・自己破産前に年金専用口座を作る

銀行から借入をしている場合は口座凍結のリスクがあるので、自己破産前に年金専用口座を作ることをおすすめします。

また、専用口座を作った銀行から借入をすると差し押さえされる恐れがあるので、借入は一切しないことが前提となります。

5.借金問題の解決は弁護士に相談を

自己破産をしても年金を受け取ることは可能です。公的年金は差し押さえが禁じられているので、没収される心配もありません。

将来の受給権についても制限されることはないので安心してください。

しかし、年金担保融資から借り入れをしている場合は、自己破産をしても返済は続くので注意が必要です。

年金生活で借金返済を続けるのは負担が大きいので、どうしても返せない場合は一刻も早く自己破産を検討することをおすすめします。

泉総合法律事務所は、年金受給中の方の自己破産の解決事例も豊富にございますので、お困りの場合はお気軽にご相談下さい。相談は何度でも無料です。

借金問題は専門家と一緒に解決していきましょう。

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