刑事事件

振り込め詐欺で逮捕されたら、主犯・かけ子・受け子などは懲役何年?

振り込め詐欺で逮捕されたら、主犯・かけ子・受け子などは懲役何年?

振り込め詐欺に関わってしまうと、主犯格だけではなく「受け子」と呼ばれるお金の受け取る役割の人も、厳重に処罰されます。

振り込め詐欺には、実はいろいろな役割分担があり、成立する犯罪も異なりますし、予想される刑罰の相場も変わってきます。

今回は、振り込め詐欺で逮捕されるパターンと、逮捕されたときの量刑の相場、対処方法について、刑事事件の経験豊富な弁護士が解説します。

1.振り込め詐欺に関わる人

振り込め詐欺は、高齢者などに電話をかけ、相手の子どもや孫のフリをして「交通事故を起こしてしまったから賠償金の資金を渡してほしい」とか「会社でお金を横領してしまって損害賠償しなければならないので、資金を渡してほしい」などと言い騙す手法の詐欺です。最近では手口がどんどん巧妙化しており、高齢者以外の人をターゲットにしたものも増えています。

複数の役割の人間がかかわるケースが多く、具体的には以下のような役割分担があります。

  • 主犯格
  • かけ子
  • 受け子
  • 出し子

振り込め詐欺関係者のうち、主犯格以外の人は普通の若者が多く、アルバイト感覚で振り込め詐欺に加担しているケースが多いです。

違法行為と知らされないまま各種の役割を果たしているうちに、グループから抜けられなくなってしまいます。犯罪行為であると気づいたときには、既に深く加担しているために、バレると逮捕されて重い刑罰を科される状態になっています。

受け子や出し子などの末端の役割には、中学生を含む未成年者が含まれていることもあります。

(1) 主犯格

主犯格は、振り込め詐欺の方法を立案したり、詐欺を行うための人を集めたり、それぞれに具体的な指示を出したりして指揮をする人です。暴力団関係者であるケースもみられます。

主犯格の責任は重大で、もっとも重く処罰されます。

(2) かけ子

かけ子は、被害者に電話をかけて騙す役割の人です。

例えば、高齢者などを狙って、子どもや孫のフリをして、お金を用意するように言います。

相手が騙されると、振込先を指定したり、受け取りに行くと言ったり、現金を送付するように言ったりします。

かけ子は暴力団関係者などではなく、学生などの普通の若者であるケースが多いですが、被害者を直接騙しているので、刑罰が重くなるケースが多いです。

(3) 受け子

受け子は、被害者の自宅を訪ねて直接お金を受け取りに行く役割の人です。

例えば、かけ子によって騙された高齢者がお金を用意しているところに受け子が訪問し、その場でお金を受け取って帰ります。

振り込みにすると銀行口座が必要になりますし、口座から足がつくことがあるので、多くの場合は振り込みを避けて直接取りに行かせるのです。

受け子も普通の学生などであることが多く、「お金をあげるから、ちょっと書類を取りに言ってほしい」などと言われて、振り込め詐欺の片棒とは気づかないまま被害者宅に行ってお金を受けとってしまうこともあります。

こちらも被害者を直接騙す役割を果たすので、刑罰は重くなることが多いです。

(4) 出し子

出し子は、被害者によって振り込まれたお金を出金に行く係の人です。銀行に行き、振り込みを確認してお金を下ろしてきて主犯格に渡します。

受け子も暴力団関係などではなく、普通の学生などの若者であるケースが多数です。

被害者と直接関わらない分、振り込め詐欺関係者の中では処分が軽くなる可能性が高い役割です。

(5) 末端の幇助者

自ら被害者にかかわったり銀行口座から出金したりすることはなくても、末端で幇助行為をする者がいます。

例えば、プリペイド携帯を契約してかけ子に渡したり、犯罪グループに加わるための人材を集めて紹介したりします。

振り込め詐欺グループが摘発されると、こうした末端の幇助者も処罰されます。

2.振り込め詐欺で成立する犯罪

振り込め詐欺で逮捕されてしまったら、どのような犯罪が成立する可能性があるのでしょうか。

(1) 主犯格

主犯格には、「詐欺罪」や「組織的犯罪処罰法違反」の罪が成立します。

詐欺罪は、被害者に対して欺罔行為を行い、被害者を錯誤に陥れて財産を処分させたときに成立する犯罪です(刑法246条1項)。

主犯格は、自らは詐欺行為をしなくても、かけ子や受け子を使って被害者を騙し、被害者から金銭を受け取っているので詐欺罪となります。刑罰は10年以下の懲役刑です。

振り込め詐欺が組織的に行われていた場合には、「組織的詐欺罪」が成立するケースもあります。

組織的詐欺罪とは、組織的犯罪処罰法によって定められている犯罪です。振り込め詐欺グループが組織ぐるみで計画的に詐欺行為を実行していた場合に成立します。

量刑は大変重くなり、1年以上の有期懲役刑となります。(有期懲役刑の上限は20年です)

(2) かけ子

かけ子には、「詐欺罪」が成立します(刑法246条1項)。

かけ子は、被害者に直接はたらきかけて「交通事故に遭ったから賠償金の資金を支払ってほしい」などと言って騙し、被害者を「錯誤」に陥れています。被害者はその錯誤にもとづいて、お金を受け子に渡したり銀行に振り込んだりして処分行為をしているので、詐欺罪の構成要件を満たします。

刑罰は、10年以下の懲役刑です。

(3) 受け子

受け子は、被害者宅に行って、子どもや孫などの使いのものなどと言って被害者を騙してお金を受け取ります。

そこで、受け子も詐欺行為をしていると言え、詐欺罪が成立します(刑法246条1項)。

刑罰は、10年以下の懲役刑です。

(4) 出し子

出し子は銀行口座からお金を出金してくる係なので、被害者と直接関わることがなく、被害者への詐欺罪は成立しません。

また、銀行口座に振り込まれたお金を出金しているだけなので、銀行を騙していることにもなりません。

この場合、銀行の占有下にあるお金を無権利で出金しているので、「窃盗罪」が成立します。

窃盗罪の刑罰は、10年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑です。

(5) 末端の幇助者

プリペイド携帯を契約して貸したなど、末端で幇助しただけであっても、振り込め詐欺行為を助長している以上は犯罪が成立します。

この場合には、詐欺罪の幇助犯となります(刑法246条1項、62条1項)。

幇助犯となった場合には、詐欺罪の刑罰である10年以下の懲役刑から必要的に減軽されます(刑法63条)。

以上のように、振り込み詐欺関係者では、出し子のみが窃盗罪、あとは詐欺罪(場合によっては組織的詐欺罪)が成立します。

3.振り込め詐欺で逮捕されたときの量刑の相場

振り込め詐欺で逮捕されたとき、どの程度の刑罰が適用されるのか、量刑の相場を確認しましょう。

(1) 主犯格

主犯格の場合、実刑判決を免れることは難しいです。

振り込め詐欺は、規制を強化しても次々に新手の悪質な手口で行われ、被害額も大きくなることが多く、厳罰化が進んでいるからです。主犯格として、集団を統率して振り込め詐欺を行っていたことの責任は重いです。

犯行が組織的に行われており悪質で、複数の詐欺行為によって立件された場合などには、刑罰が非常に重くなります。

例えば、被害額が1億円を超えており、組織的犯罪処罰法が適用される場合などには、主犯格に対して懲役20年の刑罰が下されるケースもあります。

被害額が1000万円程度でも、主犯格であれば10年前後の懲役刑が科される可能性が高いです。

神戸地裁平成20年7月16日の判決で、約8名の振り込め詐欺集団が、のべ1億2000万円を騙し取った事件においで、リーダー格に懲役11年と罰金300万円の判決が下された例などもあります。

振り込め詐欺の主犯格の場合、軽くても懲役6年(実刑)以上となると考えましょう。

(2) かけ子

被害者に電話をかける「かけ子」の場合、自ら被害者に電話をかけて直接詐欺行為をはたらいているので、重い責任が発生します。

初犯であっても2年程度の懲役刑(実刑)となるケースが多いです。

(3) 受け子

受け子の場合にも、直接被害者と会って詐欺行為を働き、相手にお金を交付させている点で、責任が重いです。

かけ子と同様に重く処罰され、初犯であっても、1年6か月や2年などの懲役刑になる可能性が高いです。

(4) 出し子

出し子の場合には、被害者に対する直接の欺罔行為がないので、かけ子や受け子よりは刑罰が軽くなりやすいです。

また、かけ子や受け子は詐欺罪ですが、出し子の場合に成立するのは窃盗罪という違いもあります。

そこで、出し子であれば、軽く済めば執行猶予がつくケースもみられます。

ただ、出し子だから執行猶予をつけてもらえるという意味ではなく、実刑となる可能性もあります。

(5) 末端の幇助者

プリペイド携帯を借りて実行犯に渡したり人材を紹介したりした末端の幇助者の場合にも、詐欺罪の幇助犯として、懲役1年6か月~2年程度の実刑になる可能性があります。

実行犯よりは執行猶予がつきやすいです。

(6) 未遂に終わったケース

振り込め詐欺は、被害者に気づかれたり、銀行で振り込みを止められたりして未遂に終わるケースもあります。

未遂犯の場合には、裁判所の裁量によって任意的に刑罰が減軽されますが、主犯格は2年程度の実刑になる可能性が高いです。

かけ子や受け子、出し子などの関与者の場合には、執行猶予がつきやすいです。

(7) 未成年の場合

振り込め詐欺の受け子や出し子などは、高校生などの未成年者であることも多いです。

未成年の場合には、一般の成人の刑事事件とは異なる「少年審判」という手続きで処分を決められます。

少年審判は、刑罰を与えるのではなく、少年の矯正、更生のための手続きなので、刑罰は適用されません。最終的に裁判官が、保護観察処分か少年院送致かなど処分を決定します。

振り込め詐欺に加担した場合、そのまま社会に戻すと更生が困難と思われると、少年院送致される可能性が高まります。

反対に、初犯で詐欺グループと関わって日が浅く、自宅に戻しても家族などによる監督によって更生できる可能性が高いなら、保護観察処分にしてもらいやすいです。

4.振り込め詐欺で逮捕された場合の対処方法

もしも自分の息子などが振り込め詐欺グループに取り込まれて逮捕されたら、以下のように対応しましょう。

(1) すぐに弁護士に依頼する

振り込め詐欺で身内が逮捕されたときには、すぐに弁護士に相談することが重要です。

弁護士であれば、逮捕後3日間の家族が会えない期間にも接見が認められます。当初から弁護士が本人に適切な対処方法をアドバイスしておけば、不必要に不利な供述調書をとられて後の刑事裁判で利用されるリスクを防げます。

また、逮捕された本人は留置場の慣れない環境で、戸惑い不安になっているものですが、弁護士が今後の予想される手続きの流れを説明したり、励ましたりすることにより、厳しい取り調べに対しても適切に対応できるようになります。

また、弁護士が被害者との示談を進めたり、贖罪寄付をしたり、被疑者にとって有利な事情を拾い出したりすることにより、可能な限り刑罰を引き下げることができます。

(2) 本人に接見に行く

また、家族自身もすぐに接見に行きましょう。

ただ、逮捕後3日間は家族であっても接見が認められないので、3日経って身柄拘束が「勾留」に切り替わったタイミングで会いに行くと良いでしょう。

家族が面会に来ると、本人も気持ちが落ち着いて精神的に安定します。

(3) 必要な物を差し入れる

留置場では物品が不足するので、本人が必要とするものを差し入れましょう。

例えば、衣類や本、現金などを差し入れてほしいと希望する人が多いです。

振り込め詐欺で逮捕されると、たとえ末端であっても実刑になる可能性があります。もしものときには、早急に弁護士までご相談下さい。

5.振り込め詐欺で逮捕されたら弁護士に相談を

以上のように、振り込め詐欺は年々厳罰化が進んでおり、逮捕されてしまった際には重い量刑が科されることがほとんどです。特に、自分の家族が振り込め詐欺に関わっていたと分かれば、大変なショックを受けるでしょう。

逮捕後の不利益を最低限に抑えるためにも、振り込め詐欺で検挙されてしまった方やその家族は、お早めに刑事事件に詳しい弁護士にご相談することをお勧めします。

泉総合法律事務所は、詐欺事件につきましても多くの相談・解決実績がございます。初回のご相談は無料となっておりますので、どうぞ安心して専門家である弁護士にご相談ください。

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