交通事故

主婦の家事は立派な労働です!交通事故で請求できる休業損害

主婦の家事は立派な労働です!交通事故で請求できる休業損害

交通事故で仕事を休んだ場合には、休業損害を請求することができます。

では、現実に収入を得ているわけではない主婦の場合は、休業損害はもらえないのでしょうか?

この記事では、主婦も休業損害をもらえる場合があるのか?もらえるとしていくらもらえるのか?などの疑問に対して、詳しく解説していきます。

1.休業損害とは

休業損害」とは、被害者が交通事故により受けた怪我が治癒するか、治療しても良くならないような状態(「症状固定」の状態)になって治療が終了した時点までの療養の期間中に、怪我や怪我の治療のために働けなくなったことから生じる収入の減少による損害のことをいいます。

(1) 自賠責保険における休業損害

自賠責保険では、原則として1日6,100円が支払われます(※なお、2020年3月31日以前の事故は日額5,700円となります)。

また、これ以上の収入減の立証ができた場合には、19,000円を限度として、その実額が支払われます。

(2) 弁護士基準(裁判基準)における計算方法

一方、弁護士が損害賠償請求をする場合に用いる弁護士基準では、休業損害の金額は、一般的に、次のような計算式によって算定します。

事故前の収入(基礎収入)の日額×事故発生日から症状固定日までの休業日数―休業中に賃金等の一部が支払われた場合における支払分

2.専業主婦の基礎収入

(1) 基本的な考え方

それでは、現実に収入を得ているわけではない主婦の場合、基礎収入は0円ということになってしまうのでしょうか。

この点について、判例は、

「結婚して家事に専念する妻は、その従事する家事労働によって現実に金銭収入を得ることはないが、家事労働に属する多くの労働は、労働社会において金銭的に評価されうるものであり、これを他人に依頼すれば当然相当の対価を支払わなければならないのであるから、妻は、自ら家事労働に従事することにより、財産上の利益を挙げているのである」(最判昭和49年7月19日、民集28巻5号872頁)

としています。

そして、家事労働の金銭的な評価をどのようにするかについて、同じ判例では、「家事労働に専念する妻は、平均的労働不能年令に達するまで、女子雇傭労働者の平均的賃金に相当する財産上の収益を挙げるものと推定するのが適当である」とされています。

つまり、現実に収入を得ているわけではなくても、家事労働も金銭的に評価されるべきであるから、主婦の基礎収入は0円ではないというのが、判例の考え方なのです。

そして、この考え方を踏まえて、実務では、家事専業者については、原則として、事故の発生した年の賃金センサス(毎年厚生労働省が実施している賃金構造基本統計調査の結果に基づいて、労働者の性別、年齢及び学歴等の別に、平均収入をまとめたもの)の女性の学歴計・全年齢平均賃金が、基礎収入として採用されます。

なお、平成29年の女性の学歴計・全年齢平均賃金は、377万8,200円です。

(2) 特段の事情がある場合の減額

専業主婦の基礎収入につきましては上記が原則ですが、被害者の年齢、家族構成、身体状況、家事労働の内容等に照らして、平均賃金に相当する労働を行い得る蓋然性が認められない特段の事情が存在する場合には、適宜減額することとされています。

例えば、高齢で同居している子どもなどもいないような場合などに、減額されることがあります。

相手方の保険会社は、減額を主張することがよくありますが、その主張が妥当なものであるとは限りませんので、そのような場合には、保険会社の提示を鵜呑みにせずに、弁護士に相談してみることをおすすめします。

3.兼業主婦の基礎収入

家事を日常的に行っていると同時に、家事以外に仕事もしている兼業主婦については、どのように考えるのでしょうか。

実務では、兼業主婦の場合、現実に得ていた収入の金額と、事故の発生した年の賃金センサスの女性の学歴計・全年齢平均賃金を比較して、いずれか高い方を採用するという取り扱いがされています。

4.主婦の休業期間

会社員であれば、会社を休んだ日ははっきりしますので、比較的簡単に休業日数を判断することができます。しかし、主婦の場合、家事ができなかったのが何日間なのかということの判断はなかなか困難です。

また、主婦の場合は、家事が完全にはできなかったとしても、一部はできたということもよくあります。

そこで、主婦の休業日数については、いろいろな考え方があるのですが、主算出方法は、次のようなものです。

  • 入院日数、実通院日数を休業日数とする。
  • 事故時から症状固定時まで傷害の治ゆ経過等に応じて相当な休業率を段階的に下げていく方式によって算定する。

つまり、休業日数を〇日間と出すのではなく、事故当初は100%の休業率、3~4カ月目は80%、5~6カ月目は60%などとして、算出する考え方です。

どのように考えるかは事案によっても異なりますが、このように複数の考え方がありますので、主婦の休業日数の出し方は、示談交渉で争いになることがよくあります。

できるだけ多くの休業損害を得るためには、きちんとした主張・立証が必要となります。個人で保険会社と交渉をするのは困難ですから、争いになりそうな場合には、弁護士に依頼した方がよいといえるでしょう。

5.主婦の休業損害請求で揉めたら弁護士に相談を

このように、主婦でも休業損害は認められますし、その金額は平均賃金によりますので、決して低額なものではありません。

ところが、相手方の保険会社は、被害者が主婦の場合、休業損害の支払いを提示しなかったり、提示しても自賠責基準によるなど非常に低い金額であったりします。相手方の保険会社が、判例上の主婦の休業損害の考え方を教えてくれることはありませんから、注意が必要です。

また、主婦の場合、休業日数についての考え方が難しく、きちんとした主張をしなければ損をしてしまうことが少なくありません。ですから、交通事故で怪我をした主婦の方は、適正な休業損害を得るため、示談に応じてしまう前に弁護士に相談することをおすすめします。

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