交通事故の過失割合とは?
交通事故で、必ずと言っていいほど登場するのが「過失割合」という言葉です。
過失割合とは、事故に対する当事者の落ち度の度合いを表す法律用語で慰謝料等の損害賠償額の算定の基礎にします。
つまり、当該事故に対する落ち度の度合いが損害賠償額に直接影響するということです。
ここでは、過失割合で知っておくべき内容をご説明します。過失割合の基本から、いつ・誰が・どうやって決めるのか、そして弁護士に依頼すべきメリットまでをお伝えします。
このコラムの目次
1.過失割合で知っておくべきこと
まず基本として、①車対人の交通事故で車が不利な理由、②当事者同士の揉め事を防ぐコツをご説明します。
(1) 車対人の交通事故で車が不利
車対人の事故では、ほとんどのケースでドライバーの責任が重くなります。
どの程度重くなるかというと、どれだけ低く見積もっても車7:人3くらいの割合になるでしょう。
歩行者が交通ルールを守らなかったから起きた事故であるのに、車が3割も過失を背負うのはおかしいと思うかもしれません。
しかし、法律上は車が絶対的な強者です。人と事故になれば、弱者である人は大きな怪我を追う結果となりかねません。
そのため、交通弱者である人よりも、強者であるドライバーに危険を回避する義務が重く課せられています。
歩行者優先道路上の事故では、自動車の過失が100%という結果になることもあります。
(2) 当事者同士の揉め事を防ぐコツ
車同士の接触事故の場合、それぞれの過失の程度について個人の認識がそれぞれ異なるため、当事者によっては納得いかない点が多いこともあるでしょう。
そんなときに有効になるのが、客観的証拠です。
人の記憶は、曖昧で徐々に薄れていくことが多いと思います。さらに、事故当日ならまだしも、数日経てば「自分も不注意があったが、明らかに相手の不注意が大きかったはず」と心の中で自己防衛してしまう可能性もあります。
そのため、人の記憶だけでは証拠としては不十分です。
ですが、事故直後に写真を撮影しておけば、後から検証することができます。
具体的には、写真やドライブレコーダーの映像が役に立ちます。
車の傷や事故状況、現場の様子などを撮影することで客観的な証拠となります。
また、ドライブレコーダーなら、事故の映像がしっかり残っているため、算定にも役に立つことでしょう。
もっとも、ドライブレコーダーの場合は注意が必要です。客観的な映像として残るため、自分の認識とは違う内容が残っている可能性もあります。
客観的な証拠により、自らの過失が証明されることも覚悟しておくべきでしょう。
このように、自分で事故直後の映像や写真を残しておくことで、過失を判断する前段階の当事者間のもめ事を防ぐことができます。
2.過失割合の決め方
次に、過失割合の判断方法についてご説明します。
当事者の落ち度は、実際の過去の裁判例を元に判断していきます。「別冊判例タイムズ38」を中心とした過去の判例集を見て、同じような事案を探し、その事例の判決で判断された過失割合がベースとなるのが通常です。
多くの場合、事故の態様や道路状況などで類型化されており、基本的には類型に従った判断がされます。
もっとも、全く同じ事故例を探すことはできません。事故が起きたタイミングやその態様などは、事件ごとに微妙に異なるためです。
そのため、基本となる過失の度合いから、個別事情を加えて修正していくことになります。
では、「今回の事故の過失割合は7:3ですよ」などと知らせてくるのは誰なのでしょうか。
この知らせを行うのは、多くの場合加害者側の任意保険会社です。
警察から知らされると考える方もいますが、民事事件に警察が介入してくることはないので、損害賠償については当事者同士の話し合いが原則となります。
任意保険会社の自動車保険に加入している場合は、加害者が直接交渉してくることはまずないため、任意保険会社の担当者が交渉役となり、過失割合を伝えるのが一般的です。
当事者間の過失について知るのは、複雑な事件である場合は調査などに時間がかかり、2週間以上かかることもあるようです。
加害者にすべての責任があると考えられる事故の場合は、過失割合が10:0となります。
このようなケースは、追突やセンターオーバーなど、限られた場合のみです。過失が明らかであるため、数日で知らせてもらえることが多いでしょう。
3.過失割合に納得できない場合
加害者側の主張する過失割合に 納得できない場合は、簡単に相手の主張に折れてはいけません。
任意保険会社の担当者はあくまで加害者側の味方です。被害者が素人であることから、ことば巧みに「良い条件だと思います」と言われるかもしれません。
しかし、自分の考える認識と異なる場合は、しっかりと自分の意見を主張し交渉すべきです。
もっとも、任意保険会社の担当者もそう簡単に折れることはありません。自分では交渉を進められないと判断した場合には、別の機関に相談してみましょう。
例えば、交通事故紛争処理センターに相談するという手もあります。 交通事故紛争処理センターは、事故の損害賠償に関する紛争解決を促す機関です。
簡易な過失割合の問題であれば、センターが弁護士を派遣してくれ、間に入って交渉してくれます。無料で利用できるので、検討する価値はあると思います。
これ以外では、弁護士に相談することも1つの方法です。 弁護士なら、被害者の代理人としてあなたの主張を法的主張に組み立てて、交渉を行うことができます。
交通事故紛争処理センターの弁護士は、あくまで中立な交渉です。そのため、必ずしも被害者の利益となる結果になるとはいえません。
しかし、弁護士を個人で依頼すればこのような心配はありません。交渉で話が折り合わない場合は、裁判で争うことも可能です。
このように、納得できない場合は、交渉を続けるべきです。ご自身での交渉が不安な場合は、サポート機関や弁護士への依頼を検討してください。
4.示談交渉を弁護士に任せるべき理由
とはいえ、弁護士に交通事故の交渉を任せることをためらってしまう方も多いと聞きます。
弁護士の敷居を高く感じ、専門家には話しづらいと考えたり、弁護士費用負担が心配だったりすることでしょう。
しかし、弁護士に示談交渉を任せる実際上のメリットとしては、以下のようなことがあります。
- 任意保険会社との交渉で、知識・経験格差がなくなる
- 治療に専念できる
- 弁護士基準で慰謝料が増額する
任意保険会社の担当者と過失割合や慰謝料額の交渉の場合、被害者との間では圧倒的に保険会社が有利です。なぜなら、相手は毎日のように交渉を行っているプロであるためです。
この点、同じ交渉のプロである弁護士が代理人となれば、交渉の落とし所もわかり、早期解決も望めます。
また、被害者の方は、交渉ごとを任せることができるので、安心して治療に専念することができます。
被害者の方は、第一にご自身の体のことに気を配るべきです。面倒な交渉ごとはプロに任せてしまえば、精神的にも安心します。
さらに、弁護士が代理人となると、慰謝料等は弁護士基準という基準で算定するため、任意保険会社の見積もりよりも数十万円増額されることも少なくありません。
特に、重症事故や死亡事故の場合は、賠償額から考えて弁護士に依頼した方が経済的メリットも大きいでしょう。
また、この場合、増額分で弁護士費用を賄えるケースも多いですし、弁護士費用特約がある場合は、ほとんどの事故において被害者の方が弁護士費用を負担する必要が無くなります。
このように、弁護士に依頼することで損害賠償請求はぐっと楽になります。
弁護士基準なら、慰謝料額も跳ね上がります。ぜひこの点も考慮に入れて、ご検討ください。
弁護士基準については以下のコラムをご覧ください。
[参考記事]
国分寺市周辺で起きた交通事故|弁護士に相談すると慰謝料が増額?
依頼者の主張では過失は1割でしたが、任意保険会社の提示した割合は4割とのことで、とても納得できるものではないとの考えから、泉総合法律事務所にご依頼をいただいた事例があります。
実際の事件記録を見て、所内で検討した結果被害者の方の言い分が認められる客観的証拠はありませんでしたが、任意保険会社の主張の矛盾点をつくことで最終的には、2割の過失で和解という形で収束しました。
この事件では、交渉ではなかなか進展が見られなかったため、裁判を起こすことになりましたが、結果的に過失の程度は半分になり、260万円の損害賠償を勝ち取ることに成功しました。
5.交通事故の示談交渉でお困りの方は泉総合法律事務所へ
交通事故の過失割合は、ご説明した通り過去の判例からある程度の割合を弾き出すことはできます。しかし、全く同じ事故というのはこの世の中に存在しません。
そのため、修正要素等、個別事情を加えて修正していくことで、実際の過失割合が決まります。実際のご事情をご相談いただければ、どのくらいの過失割合が妥当であるかをご説明することが可能です。
交通事故の示談交渉は、弁護士が代理人となることでスムーズに解決することができます。
お困りの方は、是非泉総合法律事務所へご相談下さい。
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