過去に自己破産の経験があっても2回目の自己破産はできるのか?
借金を原則として完全に免除してもらえる強力な債務整理手続が自己破産手続です。
しかし、自己破産手続によりいったん借金を完全にリセットしたにもかかわらず、また払いきれない借金を背負ってしまう方もいらっしゃいます。
その様な場合、もう一度自己破産することは許されるのでしょうか。
このコラムの目次
1.2回目の自己破産は可能
結論から言えば、以前に自己破産をしたことがある人でも再び自己破産できることがあります。
しかし、以前の自己破産からの期間・以前の自己破産や今回の自己破産の理由などによっては、自己破産できる可能性が低くなったり、自己破産手続の負担が重くなったりするといった問題点が生じるおそれがあるのです。
(1) 自己破産の回数制限はない
世間では自己破産は一回きりと思われている風潮があります。自己破産が、財産を債権者に配当する代わりに借金を帳消しにするという「清算型」の仕組みとなっているためかもしれません。
しかし、実際には、法律上も実際の運用上も、自己破産の回数が制限されているということはありません。極端な話、3回目、4回目の自己破産が認められる可能性もあるのです。
とはいえ、何回も自己破産できることになっているとはいっても、借りては破産、借りては破産を繰り返されては、常識的に考えて大問題となることはご理解いただけると思います。
借りた相手の債権者からすれば、貸したはずのお金をほとんど回収できないことになります。配当で損害を完全に埋められるはずもありません。
自己破産手続で免責してもらえばいいのだからと安易な借金を助長することになると、社会経済の混乱を招きかねません。
そのため、法律でも、実際の手続上も、2回目以降の自己破産は、手続負担が重くなりやすく、また、自己破産が認められにくくなっているのです。
(2) 「7年経過」が目安
2回目以降の自己破産をするうえで重要なポイントは、「前回の自己破産の『免責許可決定』が確定した時」から7年経過してから今回の自己破産を申し立てたか」ということです。
前回の自己破産手続で許可決定が確定した時、つまり、借金が免除されたときから7年以内に自己破産の申し立てをすると、負担が重くなり、また、自己破産が許されないおそれが高くなってしまいます。
前回の自己破産手続で免責許可決定が確定した時から7年以内に自己破産の申し立てをすることは、免責するには不適切な事情である「免責不許可事由」の一つになっているためです。
詳しくは、7年以内かどうかで場合を分けて説明していきましょう。
2.以前の免責から7年以内の自己破産
短期間に何度も自己破産を許せば、債権者の利益を害しますし、経済の混乱も招きます。かといって、現実にまた借金に追い詰められてしまう人をまったく救わないということも問題です。
そこで、法律は、建前上、7年間は自己破産できませんとしているわけです。実際の手続の運用は、もうすこし複雑になっています。
(1) 免責が認められる可能性は低い
実は、免責不許可事由があっても、ほとんどの場合は借金を免除してもらえます。
「裁量免責制度」と言って、裁判所が免責不許可事由以外の債務者一切の事情を考慮して、免責を認めてくれるからです。
もっとも、免責不許可事由の悪質さ・手続中の態度や協力の姿勢・自己破産するほど借金をしてしまったことへの反省の有無などに問題があると、裁量免責も認められず、借金が免除されないことは、もちろんあります。
そして、以前の自己破産による免責許可決定の確定から7年以内に再び自己破産の申し立てをすることは、比較的、悪質な免責不許可事由とされています。短期間に自己破産を繰り返すということは一般的には反省をしていないと捉えられてしまうからです。
一応、裁量免責が認められる場合はあります。しかし、その可能性は低くなります。
(2) やむを得ない理由があれば自己破産が認められることも
裁量免責は、問題となる免責不許可事由以外の事情も考慮します。
たとえば、病気やリストラなど、やむを得ない理由による借金をしてしまった場合には、裁量免責されやすくなるでしょう。他に免責不許可事由がないことも重要です。
逆に言えば、そのような特別な事情がなければ、裁量免責をしてもらえる可能性はあまり高くありません。
(3) 手続負担は増えてしまう
最終的に裁量免責をしてもらえたとしても、免責不許可事由がある以上、費用や手間などの手続負担が重くなることは避けられません。
免責不許可事由があると、裁判所は「破産管財人」を選任する「管財事件」という種類の自己破産手続で手続を始めます。
債務者が原則として申立までに支払う必要がある破産管財人への報酬予納金は、裁判所の運用などの事情により上下しますが、20~50万円程度にもなります。
破産管財人からの呼び出し、面談、資料提出などへの対応の負担も重くなるでしょう。債務者は、裁判所へはもちろん破産管財人にも、自己破産に関する事情を真摯に説明し、手続に協力する義務を負っています。ウソをつく、資料提出の締め切りを破る、このようなことをすると重大な免責不許可事由になってしまいます。
7年以内の自己破産ともなれば、破産管財人は念入りに調査を行います。裁量免責すべきか裁判所が判断するうえで参考にされる意見書の作成も、破産管財人の仕事だからです。正直に真摯にまじめな態度を貫いて反省を示さなければ、裁量免責は期待できません。
このように、費用は大きく増え、手続の中でも心身ともに負担が大きくなることでしょう。
管財事件になってしまうことによる負担増はどうしようもありません。裁量免責をされるために、破産管財人への協力を惜しまないようにしてください。
3.以前の免責から7年以上経過後の自己破産
以前の免責許可決定の確定から7年後よりあとに自己破産手続を申立てた場合、それ自体は免責不許可事由になりません。法律の規定上、当然のことです。
裁判所が、他に免責不許可事由の疑いはないと認めれば、免責自体は問題なくされることになります。なお、配当すべき財産もないなら、破産管財人を選任するまでもないということで、管財事件より比較的簡単な手続の種類である「同時廃止」が利用されることもあります。
しかし、現実問題として、また自己破産で借金をなくすことについて、裁判所が厳しい態度で臨むことには注意が必要です。
(1) 裁量免責を受けにくくなる
7年以上経過後の申し立てであるため、再度の自己破産であることが免責不許可事由にならないとしても、裁量免責すべきかの判断材料として、以前に自己破産したことは大きなマイナス要素になります。
特に、借金をした理由が依然と同じ場合は大問題です。浪費やギャンブルによる借金は免責不許可事由にもなりますが、またギャンブルで借金をしたとなれば、裁量免責がされない可能性が非常に高くなります。反省していないことがまるわかりだからです。
裁量免責の判断では、「借金への反省を実際の言動や態度、生活の改善で示しているか?」という点が特に重視されます。
ギャンブル依存から抜けられず借金を繰り返してしまった場合、その原因と解決方法を具体的に説明し、手続中に破産管財人と生活習慣について面談していく中で、しっかりと今度は反省したと伝えるしかありません。それでも、裁量免責が認められるかは、ここでは断言できません。
弁護士とよく相談しましょう。借金の返済負担が残るものの、免責不許可事由が問題とならない、任意整理や個人再生手続など、他の債務整理も検討すべきです。
(2) 管財事件になりやすくなる
免責不許可事由は、法律だけではっきり決まっているものではなく、各地の裁判所の運用、さらには、破産管財人により左右されます。形式的に考えれば免責不許可事由になるかもしれないけど、具体的事情からすると免責不許可事由とは認めない事情は、意外と多いのです。
しかし、以前に自己破産をしたとなれば、裁判所の態度は一気に厳しくなります。7年前かどうかにかかわらず、また支払いきれない借金を作ってしまったことに変わりはありません。裁判所は、債務者の生活に何か問題があり、厳しく確認すると免責不許可事由になる事情があるのではないかと考えてしまうのです。
そのため、初回の自己破産ならスレスレセーフの事情でも、見逃してもらえず免責不許可事由ありとされ、管財事件にされてしまうおそれがあります。
管財事件となれば、破産管財人が選任されることによる費用や手間の負担が重くなります。何より、破産管財人も免責不許可事由の調査について厳しく判断しますから、手続への協力や態度などでしっかり反省を見せないと、借金がなくならないことにつながってしまいます。
4.2度目以上の自己破産をお考えの方へ
自己破産手続は、借金を帳消しにできる非常に強力な債務整理手続です。しかも、以前自己破産したことがあってもまた自己破産をすることが認められています。
しかし、さすがに効果が強力すぎるため、再度の自己破産には、これまで説明したような高いハードルが設けられています。
以前の自己破産から7年以上経過していても、厳しい質問をぶつけてくる裁判所や破産管財人に説得ある説明をして、自己破産を成功させるには、弁護士の手助けが必要です。まして、どうしても7年経過前にまた自己破産をしたいというのであれば、他の債務整理をすることができないかも合わせて、専門家によるしっかりとしたサポートを受けるべきです。
泉総合法律事務所では、これまで多数の借金問題を、自己破産手続を含む債務整理で解決してきた豊富な実績があります。
以前自己破産手続で免責を受けたものの、また支払えそうにない借金を負ってしまい、ご不安の皆様は、是非、お気軽にお問い合わせください
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