刑事事件

痴漢の捜査はどのように行われる?後から逮捕される可能性はあるか

痴漢をしてその場では捕まらず逃げられたとしても、身に覚えのある人は、後日逮捕されるのではないかと不安な気持ちになると思われます。

痴漢事件の場合、捜査はどのように行われるのでしょうか。また、捜査の結果、痴漢が警察に発覚した場合はどうすればよいのでしょうか。

以下においては、痴漢の後日逮捕の可能性、痴漢で後日逮捕されるとどうなるか、痴漢で前科を回避する方法、痴漢事件の捜査が進み警察に発覚した場合の正しい対処法などについて、説明することとします。

1.痴漢の捜査はどのように行われるか

痴漢の場合は、痴漢の被害者や痴漢行為の目撃者がその場で現行犯逮捕するケースがほとんどです。
しかし、後日逮捕されるケースも稀ではありません。

以下のような捜査がなされ、捜査機関から逮捕状の請求があれば、裁判官は証拠を検討して、被疑者が痴漢の犯人であると疑う相当な理由があると認めれば、逮捕状を発付することになります(刑訴法199条2項本文)。

(1) 被害届の提出

被害届は犯罪による被害の事実の申告です。被害者から被害届が提出されると、警察はこれを端緒として捜査を開始します。

被害届によって加害者(被疑者)が特定されていれば、その被疑者を対象に捜査が開始され、逮捕の要件が揃った段階で、捜査機関は逮捕状を請求します。

なお、痴漢は、都道府県の迷惑防止条例違反の罪(一般的には、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金)、刑法の強制わいせつ罪(6月以上10年以下の懲役)を問わず処罰にあたり告訴を必須としない非親告罪ですから、被害者の被害届や告訴状がなくとも捜査が行われ、検察官は起訴することができます。

(2) 防犯カメラの映像

現在、駅構内、改札、エスカレーター、エレベーターなど、至る所に防犯カメラが設置されています。また、一部の電車内にも防犯カメラが設置されています。

捜査官は、痴漢被害の申告があれば、防犯カメラの映像をもとに捜査を進めて、犯人を特定します。

(3) 交通系ICカード(特に定期券タイプ)による特定

痴漢をした者が、改札から交通系ICカード(例えば、SUICA。特に定期券タイプ)を利用して出場した場合には、交通系ICカードの利用履歴から、駅の出場時刻が割り出され、これと防犯カメラに映る改札口からの出場の映像、時刻との照合などの捜査をします。

(4) 被害者や目撃者の供述

被害者や目撃者の具体的な供述があり、捜査の結果、他の証拠(防犯カメラの映像、被害者や目撃者の供述の場合は相互の供述、これらの供述から作成された犯人の似顔絵など)による裏付けもあれば、犯人の特定が可能となるでしょう。

2.痴漢で後日逮捕されるとどうなるか

(1) 身柄を拘束される場合

①逮捕

被疑者は、痴漢で逮捕された場合、弁解の機会を与えられるなどして一通り捜査活動の対象とされた後、逮捕から48時間以内に検察官に送致されます(203条)。

送致を受けた検察官は、被疑者の弁解を聴くなどして警察同様に捜査を行った上で、被疑者の身体を拘束したまま更に捜査を行う必要があると判断した場合は、被疑者を受け取ってから24時間以内、かつ、逮捕から72時間以内に、裁判官に勾留の請求をします。

検察官は、勾留請求も起訴もしないのであれば、直ちに被疑者を釈放しなければなりません(205条)。

②勾留

裁判官は、検察官の勾留請求を受け、勾留質問を行って、その当否を審査しますが、被疑者が、罪を犯した疑いがあり、法の定める身体拘束の条件である住居不定か、罪証隠滅のおそれ又は逃亡のおそれがあるかのいずれかに当たり、勾留の必要性があると判断した場合は、10日間の拘束を認める勾留決定をします(刑訴法207条1項、60条1項、61条)。

検察官は、原則として、この10日間で起訴・不起訴の判断をしなければなりませんが、やむを得ない事情がある場合は再度10日を上限として勾留の延長を裁判官に請求することができ、裁判官は、請求に理由があれば10日を上限として勾留の延長を決定することができます(刑訴法208条2項)。

場合によっては10日間の延長請求に対し7日間だけ認められるとか、最初から7日間だけ延長請求されるようなこともあります。

こうして、最長で合計20日間の勾留が認められます(逮捕による最大72時間の拘束時間を併せると、身柄拘束期間は最大で23日間となります)が、それ以上の延長は許されておらず、検察官は、この期間内に起訴を行わない場合、直ちに被疑者を釈放しなければなりません(刑訴法208条)。

なお、被疑者は、逮捕中及び勾留中において、警察官や検察官から、取調べを受ける等の捜査活動の対象とされることになります。

さらに、拘束されたまま起訴された場合には、保釈(刑訴法89条~91条)が認められない限り、身体の拘束が続くことになります。

(2) 在宅の場合

勾留の必要がないと判断されれば、逮捕だけで釈放され、以後は捜査機関が必要に応じて被疑者を呼び出す在宅事件となります。

捜査は続きますので、一般的には、事件から1か月~数か月が経過した後、警察あるいは検察庁から呼び出しがあり、取調べが行われます。

3.痴漢で前科を回避するには

痴漢を犯した場合、身柄事件であれ、在宅事件であれ、起訴を免れる(=検察官の不起訴処分を得る)ことが重要です。

初犯や軽微な痴漢(迷惑防止条例違反の罪の場合)であれば、略式起訴による罰金の可能性がありますが、軽い罰金であっても、刑事処分を受ければ前科が付いてしまいます。前科が付くことで事実上解雇されてしまう等社会生活上の不利益が生じる危険もありますので、そのリスクは避けたいものです。

したがって、略式起訴も含めて、起訴を避けることが重要になります。そのためには、早期に被害者との間で、示談を成立させることが必要不可欠なのです。

示談が成立すれば、ほかの事情も併せて不起訴処分となり、前科が付かないで済む可能性もあるからです。

4.痴漢事件の捜査が進み警察に発覚した場合の正しい対処法

(1) 逮捕を免れる可能性

痴漢の現場を押さえられてその場で逮捕されたり警察まで任意同行された後逮捕されたりしたというケースと異なり、痴漢の現場から逃走したが、警察の捜査で後日被疑者として特定されてしまったというケースでは、一旦逃走したという事実がある以上、逮捕を免れることは通常はありえません。
警察から出頭要請が来るのではなく、刑事が逮捕のために自宅や勤務先等に来訪するでしょう。

したがって、それを覚悟して、早期に弁護士が対応できるよう、今のうちから弁護士に相談し、弁護人となってくれるよう依頼しておくべきです。

逮捕に備えて、日付を空白にした弁護人選任届を弁護士に渡しておくと良いでしょう。

(2) 弁護士に依頼する必要性

逮捕に引き続き勾留となれば、身体拘束が長くなりますので、解雇や退学の危険が高まります。このような日常生活への影響は避けたいものです。
勾留に至る前の段階で釈放されることになれば、不利益は最小限にとどめることができます。

そこで、弁護士は、次のような弁護活動をします。

逮捕中の場合、検察官に面談を求め、被疑者の「出頭誓約書」、家族の身元引受書や弁護士の意見書を提出して、勾留請求をしないように働きかけます。また、勾留請求がなされた場合には、担当裁判官に面談を求め、上記各書面を提出して、勾留の理由や必要性がないことを訴え、勾留決定をしないように働きかけます。

さらに、身柄事件であれ、在宅事件であれ、弁護士がいれば、取調べを受けるに当たっての必要なアドバイスを受けることができます。

(3) 被害者との示談交渉

痴漢事件では、被害者との示談によって、不起訴処分や釈放、罰金(迷惑防止条例違反の罪)、執行猶予付き判決や刑期の軽減につながる可能性が高くなります。
不起訴処分となれば、前科が付かないで済む可能性もあるのです。

とはいえ、被害者との示談交渉は難航が予想されます。しかも、痴漢事件のような性犯罪の場合、通常は、被疑者やその家族は被害者の連絡先を知りませんし、警察や検察官も、被害者の気持ちを酌んで、被疑者にその連絡先を教えてくれることはありません。

しかし、弁護士の要請があれば、警察や検察官も、被害者の承諾を得て、その連絡先を開示してくれる可能性があります(被害者の承諾が得られず、稀に連絡先を教えていただけないこともあります)。

そして、弁護士は、被害者の連絡先の開示が得られれば、示談交渉を進めていきます。

被害者が未成年の場合には、示談交渉の相手は被害者の保護者である両親になります。弁護士は、被害者の心情に配慮しながら、被疑者の真摯な反省と誠意ある謝罪の気持ちを、被害者(被害者が未成年の場合はその保護者)に受け入れてもらうよう粘り強い交渉をおこないます。

5.まとめ

性犯罪に対する社会一般の評価から、痴漢事件についても厳しい非難は免れませんが、弁護士に依頼することにより、示談の成立が早ければ早いほど、被疑者に有利な処分がなされる可能性があります。

泉総合法律事務所は、痴漢事件の弁護経験が豊富で、示談交渉の実績も多数あります。痴漢をしてしまった、逮捕されてしまった、前科を付けたくない、被害者と示談したいという方は、当事務所に是非ご依頼ください。

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