交通事故

認定率5%前後!?交通事故で後遺障害認定を受けるためのポイント

認定率5%前後!?交通事故で後遺障害認定を受けるためのポイント

交通事故によって後遺障害が残ってしまったときには、症状によっては一生不便な生活を強いられることになります。後遺障害慰謝料は、今後生じるそんなすべての損害をまとめて補償するためのものです。

今後の生活を少しで安心して送るためにも、適正な補償を受け取ることが大切です。

後遺障害慰謝料を受け取るためには、「後遺障害の認定」を受ける必要があります。

後遺障害の認定には、2つの申請方法があります。実は、申請方法の選択によって、後遺障害の認定結果に違いが生じることも珍しくありません。

そこで今回は、後遺障害の申請の2つの方法の違いについて解説します。

1.「後遺障害の認定」とは何か?

後遺障害の認定」は、交通事故の相手方に後遺障害慰謝料を請求する際に必ず必要となる手続きです。

これから解説するように、後遺障害慰謝料の請求の可否や金額の算出と後遺障害の認定は密接な関係があります。

後遺障害の認定手続きでマズイ対応があったときには、実際に後遺障害が残ってしまった場合であっても、後遺障害慰謝料を受け取れない可能性もあります。

(1) 後遺障害慰謝料と後遺障害の認定

後遺障害慰謝料は、認定機関によって認定された「後遺障害等級」に応じて金額が算出されます。つまり、認定機関によって認定された「後遺障害等級」が低ければ受け取れる後遺障害慰謝料は少なくなります。

また、「後遺障害なし(非該当)」と認定されれば、実際の症状の有無にかかわらず後遺障害慰謝料を請求することはできません。

たとえば、自賠責保険における後遺障害慰謝料は、次のように定められています。

後遺障害等級

後遺障害慰謝料の額

後遺障害等級

後遺障害慰謝料の額

第1級

3,000万円

第8級

819万円

第2級

2,590万円

第9級

616万円

第3級

2,219万円

第10級

461万円

第4級

1,889万円

第11級

331万円

第5級

1,574万円

第12級

224万円

第6級

1,296万円

第13級

139万円

第7級

1,051万円

第14級

75万円

※介護を要しない場合の後遺障害慰謝料の金額(自賠責法施行令別表第2)

(2) 後遺障害認定の現状

後遺障害の認定機関として最も大きな組織は、「損害保険料率算出機構」です。

この損害保険料率算出機構が毎年発刊している「自動車保険の概況」によれば、自賠責保険における後遺障害認定の件数は、毎年約6万件です。

「後遺障害を認められている人はたくさんいる」と感じる方もいるかもしれませんが、後遺障害等級認定は、毎年130万件ほどの申請があります。認定率としては5%前後になりますので、「後遺障害認定を受ける」ことは簡単なことではありません。

2.後遺障害認定の手続き

後遺障害の認定手続きの大まかな流れは次のとおりです。

  1. 症状固定
  2. 後遺障害診断書の作成
  3. 後遺障害等級認定の申請(調査事務所への必要書類の送付)
  4. 書類審査
  5. 認定のための審査(書類審査)
  6. 認定結果の通知
  7. 損害賠償の支払い・異議申立て

(1) 後遺障害認定を受けるためには「資料収集」が重要

後遺障害の認定手続きの最大の特徴は、「書面審査」のみであることです。

後遺障害等級の認定は、必要書類を認定機関に送付した後は、認定のプロセスに一切関わることができません。後遺障害認定のために、認定機関が被害者を直接診察したりすることは一切ないのです。

そのため、後遺障害等級認定においては、「適切な資料」を収集することが特に重要となります。

後遺障害等級の認定のために必要な資料としては次のものが挙げられます。

手続するときに最低限必要な資料

後遺障害を認定してもらうために必要な資料

  • 交通事故証明書
  • 事故状況説明図
  • 支払請求書兼支払指図書
  • 印鑑証明書
  • 診断書と診療報酬明細書
  • 後遺障害診断書
  • レントゲン写真
  • MRI画像やエコーなど画像
  • 反射テストなどの検査結果
  • カルテ(診療記録)
  • 専門医の意見書
  • 上記の他に認定に有利となる資料

上で述べたように、後遺障害等級認定は「書面審査」なので、被害者の治療に一切関わっていない第三者がその資料を見ただけで「後遺障害がある」と判断できる資料を収集し提出する必要があります。

(2) 相手方の保険会社に任せる方法(事前認定)

後遺障害等級申請の多くは「事前認定」とよばれる方法で申請されています。

事前認定は、簡単に説明すると、後遺障害等級認定に必要な資料の収集・提出を交通事故の相手方が加入している自動車保険会社に任せることをいいます。

事前認定で後遺障害等級認定を申請すれば、被害者は、医師に作成してもらった「後遺障害診断書」を相手方の保険会社に送付するのみで良い場合がほとんどなので、後遺障害等級認定にかかる負担が非常に少なくなります。

他方で、資料の収集をすべて相手方の保険会社に任せてしまうため、後遺障害等級認定に有利となる資料のすべてが提出されない可能性があります。

資料を収集する保険会社にとっては、後遺症慰謝料額が減る(支払う必要がなくなる)方が有利だからです。

(3) 自分自身で手続きを行う方法(被害者請求)

後遺障害等級認定を申請するもう1つの方法は、被害者が自分自身で必要な資料を収集し、認定機関(調査事務所)へ送付する方法です。これを被害者請求と呼んでいます。

被害者請求をするときには、上で挙げたような必要資料をすべて自分で収集しなければなりません。したがって、納得のいく結論が得られやすい反面、資料収集のための費用や手間といった負担が生じます。

また、どのような資料を集めて良いかわからない場合には、資料が不十分なために「非該当」となるリスクもあります。

3.事前認定と被害者請求のどちらを選択すべきか

選択肢が複数あるときには「どちらが有利か」ということをどうしても考えがちです。

たしかに、事前認定は、①資料を収集・提出するのは相手方保険会社であること、②症状固定前に手続きが行われること(「事前」認定とよばれるのはこのことに由来しています)から、被害者にとって不利な結果となりやすいことは否定できません。

しかし、実際には、「事前認定と被害者請求のどちらが良いか」ということは一概に決められるものではありません。

(1) 事前認定でもかまわないケース

上でも解説したように、後遺障害等級認定は「書面審査」です。したがって、「収集・提出される資料が同じ」であれば、事前認定でも被害者請求でも結論は同じになります。

たとえば、レントゲンなどの画像資料によって「適正な後遺障害等級が確実に認定されることが期待できるケース」では、被害者請求よりも事前認定の方がコストの面で有利となる場合もあります。

(2) 被害者請求を選択すべき場合

被害者請求を選択すべき場合としては、次のようなケースが考えられます。

  • 相手方保険会社の対応が信用できないとき
  • むち打ち症のような「他覚症状のない後遺障害」の認定を受ける場合
  • 高次脳機能障害のような重篤な後遺障害の認定を受ける場合

治療中の段階から、事故状況、症状の程度・後遺障害が残る可能性などについて相手方保険会社と「認識の食い違い」があるときには、事前認定をすることはあまりお勧めできません。このようなケースでは、保険会社が誠実に対応してくれることを期待できない可能性が高いからです。

また、事故や被害状況の認識に食い違いがないとしても相手方保険会社の言動・態度などに不満がある(不安がある)ときにも、被害者請求した方がより納得のいく結論を得られることの方が多いでしょう。

また、「むち打ち症」で後遺障害の認定を受ける場合にも、被害者請求した方が良い結果が得られる場合が多いといえます。

レントゲンやMRIなどで症状やその原因が判断できない(他覚症状がない)場合に、後遺障害の認定を受けることは非常に困難です。そもそも、他覚症状のないむち打ち症のケースでは相手方保険会社も当初から後遺障害が残る可能性を否定している場合も少なくないでしょう。

むち打ち症のケースとは逆に、「重篤な後遺障害が残る可能性が高いケース」でも被害者請求をした方が良い場合が多いです。レントゲンなどの画像によって後遺障害があることがハッキリと判別できるケースでは、後遺障害の認定それ自体は事前請求でも難しくありません。

しかし、これらのケースでは、認定される等級によって「補償額が大きく変わる」ことに注意する必要があります。

たとえば、後遺障害等級1級と3級とでは、受け取れる補償額の総額に数千万円以上の違いがあります。重篤な後遺障害が残ってしまったときは、十分な補償を受けることが今後の生活のためにも重要です。

4.後遺障害の認定について不安がある場合

後遺障害が残ったときには、長期間(症状によっては一生)不自由な生活を強いられることになります。

後遺障害慰謝料は、後遺障害による損害を「一括」で補償する仕組みです。それ故に、後遺障害等級の認定は、万全を期して申請することが大切です。

(1)医師は必ずしも交通事故の専門家ではない

医師によって十分な検査・治療が行われ、客観的な資料が揃っているときには、事前申請を選択しても理屈の上では問題ないといえます。

しかし、治療を担当する医師が「後遺障害の認定に必ずしも詳しくない場合」もあります。医師は、医療の専門家ではありますが、「交通事故の専門家」ではないからです。

実は、3.で挙げた被害者請求をすべき場合のほとんどケースは、後遺障害の認定に向けた準備を「治療段階」から行うべき場合です。

たとえば、むち打ち症の後遺障害認定においては、「診断書」、「診療記録(診療報酬明細書やカルテ)」の記載内容や、MRI画像が認定の決め手となることが少なくありません。

しかし、「診断書の記載が簡単すぎる」ことや、レントゲン検査しかしていないことが理由で「非該当」となってしまうことも少なくありません。

むち打ち症の場合にMRI検査まで実施することに積極的な医師は少ないからです。そもそも、病院によってはMRI検査や、動作テスト(可動域制限の場合)、反射テスト(神経障害の場合)を行える環境が整っていない場合もあります。

(2)弁護士が医師にコンタクトすることで後遺障害の認定が有利になることは多い

被害者自身が「医師が後遺障害の認定に十分な診断書を作成し、検査を実施しているか」を判断することも簡単ではありません。また、医師に「診断書の書き方に注文をつける」ことに躊躇を覚えることも少なくないでしょう。

治療段階から弁護士に相談・依頼いただければ、医師に対して必要な対応をとることで、後遺障害の認定に耐えられる診断書の作成や検査の実施を提案することが可能です。

5.後遺障害のお悩み、被害者請求の相談は弁護士へ

保険会社に任せることに、不安があるときには、被害者請求を選択した方が良い結果が得られる可能性が高いといえます。

しかし、被害者請求を被害者自身で行うことは、負担の面で現実的ではない場合が少なくありません。交通事故や医療に詳しくない被害者自身が自力で被害者請求をすれば逆に不利な結果となってしまうことも多いといえます。

そもそも、実際の被害者の方は、「被害者請求と事前認定のいずれを選択するか決める」こと自体が難しい場合の方が多いと思います。今後の治療・生活のために後遺障害の認定はとても重要です。

後遺障害について不安なこと、わからないことがあるときには、交通事故に精通した弁護士に相談することが一番安心です。

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