交通事故後の通院と受診のポイント|正しい治療のために
「交通事故に遭ったけれど、特に身体に外傷や痛みがない」という場合には、病院へ行くべきかどうか迷ったあげく、時間がないから・面倒だから、と受診しないケースがあるようです。
しかし、これは正しい選択ではありません。交通事故に遭ったら、痛みがなくてもすぐに病院へ行くことが大切です。
これは身体のためでもありますが、適切な損害賠償金を受け取るために必要なことでもあります。
ここでは、交通事故に遭った方が、事故直後から怪我が治癒するまでどのように病院を受診するべきか、知っておいていただきたい事項をご説明します。
このコラムの目次
1.いつから病院に行くべき?
交通事故に遭ったら、いつから病院に行くべきでしょうか?
答えは、「事故の当日がベスト、遅くても2~3日以内」です。その理由は二つあります。
交通事故による身体の傷害は、事故直後には症状が現れず、数時間から1日程度経ってから症状が現れる場合が多いです。時には事故から2~3日経過後に痛みが出てくることもあります。
あなた自身は身体に痛みを感じず無事だったと思っていても、事故の時点で実際には身体が傷ついているケースが珍しくはないのです。
自分自身の健康のために、一刻も早く病院で健康状態を確認するべきです。
また、事故から初診までの間隔が空いてしまうと、受診時に身体の傷害が認められても、それが本当に交通事故によるものなのかどうかが疑問視されてしまう危険があります。
事故直後に病院へ直行していれば事故による怪我だとすぐに理解できますが、そうでない場合は、被害者の言い分が正しいと判断するだけの材料がないことになってしまいます。
万が一、傷害が事故によるものではないと判断されてしまえば、治療費や慰謝料も含めて、一切の損害賠償を受けることができなくなってしまいます。
そのような余計な疑問を生じさせないためにも、事故から間を置かずに受診するべきなのです。
2.どこの病院へ行くべき?
では、交通事故の直後に最初に行くべき病院は、どこでしょうか?
答えは、整形外科です。交通事故の打撲、捻挫、骨折などの外傷のほとんどは整形外科の扱う疾患です。
交通事故に遭ったので受診に来たと整形外科医に事情を説明すれば、交通事故特有の受傷の有無を調べてくれます。
具体的には、首、肩、腕、腰といった痛みの出やすい可動部を動かしたり、刺激したりして点検します。この段階で初めて痛みが出てくることもあります。
整形外科を受診したら、診断書の作成をお願いしておきましょう。事故直後に症状が確認されたことを証明する重要な証拠となります。
診断書を警察署に提出すれば、各都道府県の交通事故センターから人身事故の事故証明書を発行してもらえます。これは、自賠責保険の請求手続に必要な書類となります。
接骨院・整骨院・鍼灸院・マッサージへ通う場合は、整形外科医と相談する必要があります。何故なら、これらは医療機関ではないので、基本的に医師の指示に基づかない限り、その費用に対する損害賠償が認められないことが多いからです。
これらに通院をしたいときは、担当医師に相談して、整骨院などでの施術が有効であると医師が判断するとの記載をした診断書の発行を受けるべきでしょう。
また、整骨院などに通院する場合に、整形外科への通院も併行して行ってください。整形外科への通院を止めてしまうと、その時点で治ったものと誤解される危険があります。
3.通院の頻度
では、整形外科に通院を始めたら、何回ぐらい通院するべきなのでしょうか?
適正な通院頻度は症状によって異なるので一概には言えませんが、一般的には週に2~3回が理想的と考えられます。
(1) 過剰診療に注意
足しげく病院に通った方が損害賠償の金額が上がると考え、必要以上に多くの回数通院をする方がいます。
というのも、保険会社が示談交渉において提示してくる傷害慰謝料(入通院慰謝料)の金額は、実際に通院した日数や、それを2倍程度にした日数に一日あたり4,300円を掛けた金額が多いのです。
これは、自賠責保険における傷害慰謝料が、1日につき4,300円とされているためです(「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払い基準」平成13年金融庁国土交通省告示第1号)。
この通院1日あたり幾らという保険会社の慰謝料の計算方法からすると、頻繁に通院したくなるのは自然なことかもしれません。
しかし、不必要に多数回通院すると、通常の治療経過と異なる不自然さが目立つことになり、慰謝料を増額したいがための不必要な通院と判断され、入通院慰謝料の算定だけでなく、後遺障害の有無の判断等においても被害者に不利に作用しかねない危険性があります。
通院はあくまでも治療を目的として行うものであって、賠償金の増額を目指して行うべきではありません。
どの程度の回数の通院をするかは、被害者本人が担当医師とよく相談して、「治療のために必要な限りにおいて通院する」ようにしましょう。
(2) 治療の中断・中断後の再開の危険
怪我が治っていないのに通院を途中で中断してしまうことは、決しておすすめできる事ではありません。
中断して以降もう通院しなくなってしまえば、そこで怪我は治ったものと判断されてしまい、その時点までの治療費、傷害慰謝料しか受け取ることができなくなります。
怪我は完治したと判断されてしまえば、後遺障害も存在しないと扱われてしまいます。
また、一度中断してから治療を再開した場合は、慰謝料を増額させるためと疑われる危険があります。
どうしても外すことができない仕事の都合や、他の病気の手術や治療などのために通院を中断せざるを得なかったというような合理的で納得できる理由を示せる場合は別ですが、そうでないときは、治療の中断と再開は不利に扱われる危険が大きく、おすすめできません。
4.いつまで病院に通うべき?
では、通院はいつまで続けるべきなのでしょうか?
答えは、「怪我が治癒する(治る)か、症状固定になるかのどちらかまで」です。
(1) 症状固定とその後の後遺障害認定
怪我が治るまで通院するべきことは当然ですが、これ以上の治療を続けても症状は改善されず、症状が残ってしまうと判断される場合も、「症状固定」として、その時点までが通院するべき時期ということになります。
もちろん、症状固定後も本人が希望して治療を続けることは自由ですが、損害賠償との関係で言えば、症状固定後の治療費を損害賠償として請求することはできず、自己負担ということになります。
症状固定後に残った後遺症については、「後遺障害」として認められることにより、その程度(後遺障害等級)に応じて後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益という損害賠償の対象となります。
後遺障害慰謝料・後遺障害逸失利益を受け取るための後遺障害認定を得るためのポイントについては、以下のコラムをご覧ください。
[参考記事]
認定率5%前後!?交通事故で後遺障害認定を受けるためのポイント
(2) 保険会社からの治療打ち切りへの対応
通院を続けている最中に、これまで治療費を直接に病院に支払ってくれていた保険会社が、治療費の支払いを打ち切ると通告してくるケースがあります。
保険会社は保険金を節約するために、例えば、むち打ち症であれば3ヶ月程度で治療の打ち切りを打診してくることがあるのです。
もっともこれは、あくまでも保険会社が治療費の直接立替払いをやめるだけのことです。治療を継続するかどうかは、医療機関(担当医)が決めることです。
治療費の直接立替払いを打ち切ると宣告された場合は、今後の治療について医者とよく相談をしましょう。その時点で医師に症状固定と判断されるなら、後遺障害等級認定の申請をすることを考えるべきでしょう。
まだ治療を続け、症状が改善される可能性があるのであれば、医師にその旨を記載した診断書を作成してもらい、保険会社に提出しましょう。打ち切りを撤回してくれる場合もあります。
それでも打ち切りを撤回しない場合は、病院に相談をして健康保険に切り替えて自費で治療を継続しましょう。
治療に要した費用は、後に損害賠償請求をして支払ってくれるよう交渉していくことになります。
保険会社による治療費打ち切りについて、詳しくは以下のコラムをご覧ください。
[参考記事]
保険会社から交通事故の治療費打ち切りを通達された場合の対処法
5.まとめ
通院は怪我を治すためのもので、損害賠償を増額するためのものではありません。不必要な通院は、往々にして不自然さを指摘されてしまいます。
しかし、逆に必要な通院を我慢してしまうと、症状の重さに見合った正当な賠償金を受け取れない危険もあります。
交通事故の通院について迷ったら、交通事故を得意分野とする弁護士に一度相談してみることをおすすめします。
泉総合法律事務所の初回無料相談を、是非ともご利用ください。
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